【書評】LLMの原理、RAG・エージェント開発から読み解く コンテキストエンジニアリング

吉田真吾@yoshidashingo)です。

蒲生さんがいまもっとも熱い『コンテキストエンジニアリング』に関する書籍を出版されるということで、一歩先にご恵贈いただき拝読したので感想やどのような人たちが読むべきか感想をまとめました。

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結論

  • LLMの唯一の制御技術である『コンテキストエンジニアリング』を基礎から/網羅的に/端的・簡潔に理解できる教科書として利用できる。
  • コンテキストとして利用されるさまざまな情報を、それがなぜ必要かビジネス的な背景や技術的な背景、さらに詳しく知るための参考リンクまで丁寧に解説されている。

ということで、端的で読みやすい分量の中に、さまざまな目的のシステムにおいて、共通となるコンテキストの考え方の基礎から、コンテキストに含まれる各種情報が実際にどういうもので、どう扱うとよいかが理解できます。

LLMを活用するうえで、なんか期待していたようにはうまく動いてくれないんだよな、などと壁にぶつかってる場合や、これからLLMの活用に取り組んでみたいという人は『まずこの本を読んでから、自分が作りたいもの、活用したいユースケースにあわせた実践書に取り組む』と、LLMを業務で取り扱うプロへの最短の近道になると思います。

目次

第1章 LLMの仕組みから見るコンテキストの正体
  1.1 LLMの動作を知る意義
  1.2 LLMを構成するニューラルネットワークの基本
  1.3 LLMによるトークン生成のしくみ
  1.4 対話型LLMに施された工夫や注意点
  1.5 Reasoningモデルの進化へ
  1.6 まとめ
第2章 APIサービス利用におけるコンテキストの扱いと基礎機能
  2.1 LLMのAPIサービスの概要
  2.2 LLMベンダーが直接提供するAPIサービス
  2.3 クラウドベンダーが提供するAPIサービス
  2.4 APIやモデルの選定基準
  2.5 APIの基本的な使い方
  2.6 LLMによるツール利用
  2.7 出力スキーマの固定化
  2.8 Function CallingとStructured Output使用時のテクニック
  2.9 コンテキストキャッシュの仕組み
第3章 指示プロンプト開発の基礎
  3.1 前提となるリファレンス
  3.2 指示プロンプト開発時に把握しておくべき全体指針
  3.3 指示プロンプトの記述に活用される記法
  3.4 指示プロンプトの基本構造
  3.5 指示プロンプトの管理
  3.6 指示プロンプトの精度向上の技法
第4章 RAGにおけるコンテキスト整備
  4.1 RAGとは
  4.2 検索エンジン関連用語の整理
  4.3 RAGの全体のフロー
  4.4 RAGを使うかどうかの判断
  4.5 RAGで用いられる基盤技術
  4.6 検索を伴うRAGの精度向上のための工夫
  4.7 その他の話題
第5章 AIエージェント×ワークフローによる作業自動化
  5.1 AIエージェントはなぜ注目されたのか
  5.2 ワークフロー化によるコンテキストの分散
  5.3 市場が期待した「AIエージェント」の正体
  5.4 エージェントワークフローに関連するリファレンス
  5.5 具体例を見ながらエージェントワークフロー設計を学ぶ
  5.6 コンテキスト肥大化に伴うその他の課題と対策

なぜいまコンテキストエンジニアリングが必要とされるか

AIチャットを使う中で、プロンプトを構造的に設計することが常識となりました。そこからさらに現在だと、Deep AgentsやRAGやFunction CallingやMCP、組み込みツールの利用などがチャットやワークフローやエージェントを制御するうえで有用であることが知られてきました。これらはすべてLLM(モデル)に与える情報(=コンテキスト)で制御をしています。

つまり、LLMを上手に使うためには、今までもこれからも唯一の制御技術がコンテキストエンジニアリングであるということです。

本書では、1章でLLMがトークン生成する基本的な仕組みやTransformerの解説から始まり、指示プロンプト(システムプロンプト)の基礎、RAGの基礎から最新テクニック、AIエージェントにおけるFunction CallingやMCP、組み込みツールや最新のスキル機能の解説などを通じて、コンテキストエンジニアリングという文脈からこの数年のLLMアプリケーション開発のトピックをすべて網羅しています。

おすすめポイント

個人的におすすめなポイントが3点あります。

  1. すべてのトピックの説明が端的なうえに、蒲生さんの現場経験の知見・解釈でわかりやすく説明されていることで、コンテキストエンジニアリングという広大な知識体系に対して、まずなにをどこまで理解しておけばよいかが速習できる
  2. 1章のTransformerのデコーダーの解説がとてもわかりやすく、LLMをユーザーとして利用するうえでのコンプレックスとなりがちなTransformerの動作原理を理解できる
  3. 5章 5.5,5.6でエージェントワークフローを設計する際の具体的な手順や、コンテキスト肥大化などへの具体的対策などが解説されており、業務でテクニックをこのまま実践できる

ということで、LLMアプリを構築するためにたくさんの書籍を読んですでに実践している人にとっても、絶対に手に取ったほうがいい1冊です。

最後に

書籍の中でも触れていらっしゃる、蒲生さんと以前に共同で執筆した『ドーナツ本🍩』や『赤い鳥の本🦜🔗』が同じく技術評論社さんから発売中です。コンテキストエンジニアリングを学んだら、詳しい実践のために活用してみてください。

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